夜想葬曲

詩や短歌、想う事など

【シン・ゴジラ二次創作短歌】龍の愛した女神への祝詞

http://bekira.hatenablog.com/entry/2016/09/27/230833
の「恋人を喪った安田短歌」へ投稿した自作短歌

 

 

・曙の紫に似た雲に発ち
       君は神へと成ってしまった

 

・指先でなぞった髪の色に似た
       黒い縁取りにある君の名は。

 

・君眠り神を屠りし夜が明け
        我が目や水を括る赤かな

 

・列車逝く、いつかの僕ときみを乗せ
        途中下車して十束抜く僕

 

・灰になる 街と共に 君は逝く
        在来線と同じ速さで

 

・明けに暮れ 神を殺して 死へ向かう
        僕の靴は 鈍行列車

 

・神眠り僕は無事だと喚いても
        電話の向こう君はいなくて

 

・手のひらにあったスマホの君の名は今4寸の漆に眠る

 

(発声した声の形の指輪の話題を受け)
・薬指、指輪を縛る君の名は。僕の名を呼ぶ聲の形だ

 

・君のいないベッドの中は空の棺の中より寒い気がする

【シン・ゴジラ二次創作詩】東京駅に君の影を縫い付ける方法

待ちに待ったシン・ゴジラが公開され今のところ合計6回見に行った。

そんな中Twitterでフォロワーを中心に盛り上がった「立川での安田課長の顔、恋人喪った顔だよね…」というネタから生まれた二次創作自由詩2編。

まず暇な人はこの流れを把握してから読むのをオススメ。(全編にわたりネタバレ注意)(詩だけ読めればいいな人は読まなくてもまあ大丈夫)

 

恋人を喪った安田課長まとめ

全ての始まり

「安田課長♡恋人喪って♡」

http://togetter.com/li/1025291

落ち着くかと思いきや広がる火の粉と地獄

「安田さんの幸せな日々と絶望」

http://togetter.com/li/1026394

安田龍彦、文学へ

「 #恋人を喪った安田まとめ 」

http://togetter.com/li/1026523

 

 

 

 

 

以外2編

 

【東京駅に君の影を縫い付ける方法】

 

 

1

ホトトギスがいなくなる頃に

君もどこかへ行ってしまった

曙にたなびく空に好きと言った

あの紫だちたる雲に発ち

君は神様になってしまったのだろう

 

 

眠る暇なく旅立った

君の所在地はいまどこだろう

手紙の1つくれてもいいもんだ

どうしても君に触れたくて

吐いた紫煙は窓辺で解けた

 

 

鼻先に触れた蜜のように甘かった

君の声は僕に届きやしなかった

これを文明と言えようか

こんな文明いるもんか

 

 

 

 

 

2

ぽっかりあいた東京駅の空に

君の涙の味がした

 

 

いつかキスしたその指に

300円の指輪は嵌らないと僕は知る

 

 

ぼんやり霞んだ視線の向こう

僕の影だけに雨が振る

 

 

君が好きと言った紫色の夕暮れよ

そこのカフェで少し待ってて

 

 

雨を止ませて空を見た

仰ぎ立つ神のその向こう

雲に見えた影は君と知る

ある夜の事

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ある夜の事

 

お煎餅が割れました
波の向こうのお煎餅

この間までまんまるで
綺麗に輝いていたものですから
わたしはひどく驚いて
灯台に話を聞きますと

「鯨が齧つていったのさ」

と、灯りを回して笑います

鯨はそれをどうするのかと問いますと
答えたのは彼でなく
外国の船に乗り
ネズミ取りなぞをしている青い目の猫

「海の反対側へ持つていくのさ」

異国語訛りの言葉で教えてくれました

波の向こうの煎餅は
 欠けても変わらず明かります
海の底のその先で
 欠片も地上を照らすでしょう

鯨の歌

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鯨の歌

 

ここは海の底の底

クジラの声が聞こえます

まっさかさまにおっこちて

ぼくの影はどこへやら

すこしの光は藻に砕け

硝子のように散りに散り

 

ここは海の底の底

クジラがどこかで歌います

まっさかさまにおっこちて

ぼくの声はどこへやら

すこしの息は泡に消え

空に向かう星になり

 

ここは海の底の底

クジラが誰かに歌います

彼らが揃うて歌うのは

遠い太古の昔の昔

誰かの母が歌う唄

ヒトの忘れた子守唄

 

ぼくは海の底の底

クジラの歌に飲み込まれ

君は水際(みぎわ)に消えちゃった

今日もどこかで

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今日もどこかで

静かにあめが降りました
温かいのか
冷たいのか
あまいのか
にがいのか
わからず袋に詰めました

空があかく焼けました
朝になるのか
夜になるのか
うれしいのか
かなしいのか
知らずに瓶に詰めました

風が吹いたのですが
それは袋にも瓶にも入らずに
ひとりでに笑っておりました

星が輝いておりました
あまりに清廉で
あまりに綺麗で
あまりに多様で
あまりに唯一で
一つケエスに詰めました

あとは花や水や音楽や
それらを誰かが匣に詰め
誰かが今日も生まれます

 

 

夜明け頃

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夜明け頃

月が行灯を食べる頃
裏戸で鯨が跳ねました
そうっと出てきたお日様は
地平に朝を告げるのです

さて、その頃山が恋をする
欠伸を溢すセーラーに
木々はその葉を赤く染め
彼女に首(こうべ)を垂れました

お日様立橋昇る頃
鯨が月を食べました
そうして朝はやってきます
電車に乗ってやってきます