夜想葬曲

詩や短歌、想う事など

2016-01-01から1年間の記事一覧

鋼の雪

鋼の雪を踏みつけて 私は彼等の屍を登るひとりぼっちの雪原のバベルの塔のてっぺんへ 荒野の夕日に椅子の影とうに居なくなった薔薇の花私は貴女の声を探している 聞こえますか、今日の羊雲私は鋼の雪を食べてただ一つの歌をうたっているただ一つの声を待って…

【シン・ゴジラ二次創作短歌】龍の愛した女神への祝詞

http://bekira.hatenablog.com/entry/2016/09/27/230833の「恋人を喪った安田短歌」へ投稿した自作短歌 ・曙の紫に似た雲に発ち 君は神へと成ってしまった ・指先でなぞった髪の色に似た 黒い縁取りにある君の名は。 ・君眠り神を屠りし夜が明け 我が目や水を…

【シン・ゴジラ二次創作詩】東京駅に君の影を縫い付ける方法

待ちに待ったシン・ゴジラが公開され今のところ合計6回見に行った。 そんな中Twitterでフォロワーを中心に盛り上がった「立川での安田課長の顔、恋人喪った顔だよね…」というネタから生まれた二次創作自由詩2編。 まず暇な人はこの流れを把握してから読むのを…

ある夜の事

ある夜の事 お煎餅が割れました波の向こうのお煎餅 この間までまんまるで綺麗に輝いていたものですからわたしはひどく驚いて灯台に話を聞きますと 「鯨が齧つていったのさ」 と、灯りを回して笑います 鯨はそれをどうするのかと問いますと答えたのは彼でなく…

鯨の歌

鯨の歌 ここは海の底の底 クジラの声が聞こえます まっさかさまにおっこちて ぼくの影はどこへやら すこしの光は藻に砕け 硝子のように散りに散り ここは海の底の底 クジラがどこかで歌います まっさかさまにおっこちて ぼくの声はどこへやら すこしの息は泡…

今日もどこかで

今日もどこかで 静かにあめが降りました温かいのか冷たいのかあまいのかにがいのかわからず袋に詰めました 空があかく焼けました朝になるのか夜になるのかうれしいのかかなしいのか知らずに瓶に詰めました 風が吹いたのですがそれは袋にも瓶にも入らずにひと…

夜明け頃

夜明け頃 月が行灯を食べる頃裏戸で鯨が跳ねましたそうっと出てきたお日様は地平に朝を告げるのです さて、その頃山が恋をする欠伸を溢すセーラーに木々はその葉を赤く染め彼女に首(こうべ)を垂れました お日様立橋昇る頃鯨が月を食べましたそうして朝はやっ…

春の神話

春の神話 桜ひとつ眠った連理の枝に雪がそっと開いた月の憂いにも似た瞳は揺れる夜の帷の中 いつか誰かが呼んだ名前をひとつ雪にそっと溶かして朝日手招いてほら狛犬たちがやさしく笑ってる 散らざるはあなたの言の葉止めないで風が薄紅に色づくから 愛しい…