夜想葬曲

詩や短歌、想う事など

2016-02-01から1ヶ月間の記事一覧

鯨の歌

鯨の歌 ここは海の底の底 クジラの声が聞こえます まっさかさまにおっこちて ぼくの影はどこへやら すこしの光は藻に砕け 硝子のように散りに散り ここは海の底の底 クジラがどこかで歌います まっさかさまにおっこちて ぼくの声はどこへやら すこしの息は泡…

今日もどこかで

今日もどこかで 静かにあめが降りました温かいのか冷たいのかあまいのかにがいのかわからず袋に詰めました 空があかく焼けました朝になるのか夜になるのかうれしいのかかなしいのか知らずに瓶に詰めました 風が吹いたのですがそれは袋にも瓶にも入らずにひと…

夜明け頃

夜明け頃 月が行灯を食べる頃裏戸で鯨が跳ねましたそうっと出てきたお日様は地平に朝を告げるのです さて、その頃山が恋をする欠伸を溢すセーラーに木々はその葉を赤く染め彼女に首(こうべ)を垂れました お日様立橋昇る頃鯨が月を食べましたそうして朝はやっ…

春の神話

春の神話 桜ひとつ眠った連理の枝に雪がそっと開いた月の憂いにも似た瞳は揺れる夜の帷の中 いつか誰かが呼んだ名前をひとつ雪にそっと溶かして朝日手招いてほら狛犬たちがやさしく笑ってる 散らざるはあなたの言の葉止めないで風が薄紅に色づくから 愛しい…