夜想葬曲

詩や短歌、想う事など

2017-03-01から1ヶ月間の記事一覧

【小説】芍薬の花嫁

その日は生憎の雨で、弔問客のひそやかな会話が葬儀場に押し込められていた。 学生時代から付き合いのある友人の、そのお嬢さんが亡くなったと連絡を受けたのが一昨日の事。 おとぎ話と空想と、窓辺の庭と使用人だけが友達だったお嬢さんは、病気がちの体故…

静脈の春

「静脈の春」 時に逸りし春の風が我が血潮となりて先を歩ます。眼前の断崖にて沈む夕日は こっとん、こっとん船を漕いで海へ逝く。来た道ゆく道猫に食わせてあの子この子と幸福の数を数えている。川の色、山の色、猫の目の色、時計の針も、眠る少女のブラウス…