夜想葬曲

詩や短歌、想う事など

あさ

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   あさ
           

私がショーウィンドウの服を見ているうちに
世界は少し回ったようで、
あの子は新しい靴で出かけて行った
 真っ青な空、霞がかった春の色

私が本を読んでいるうちに
世界は少し動いたようで
窓の外の子は制服を着替えて行った
 タバコの煙が飲む、コーヒーの香り

欠伸をした猫の幸福が、
向こうの路地からやってきた。

私が少し居眠りをしているうちに
世界は少し、ほんの少し欠けたようで、
少女はお嫁に行ってしまったよ。
 満月の夜、ショーウィンドウはがらんどう。

隣の家の赤ん坊の泣き声が、
朝、カーテンを揺らしてパンが焼けた。