夜想葬曲

詩や短歌、想う事など

静脈の春

「静脈の春」

 

時に逸りし春の風が
我が血潮となりて先を歩ます。
眼前の断崖にて沈む夕日は
 こっとん、こっとん
船を漕いで海へ逝く。
来た道ゆく道猫に食わせて
あの子この子と幸福の数を数えている。
川の色、山の色、
猫の目の色、時計の針も、
眠る少女のブラウスの色も、
見よ全てあの空の色!
我が内に脈打つ春
それは確かに幸福の色。