夜想葬曲

詩や短歌、想う事など

夕日香灯

 

夕日香灯(ゆうひこうとう)

 

死んだ初夏を桜の根元に埋めまして
今日も月は店仕舞
軒で嘆く子らを前に
仏の足音が啜り泣いてやって来ます

マッチ1本の火が私の涙
その火で太陽を作るのです
然もなくば役者が降ろした緞帳に
谷の街は湖になるからです

雨雲を縫うあの人の骨に問いましょう
冷えた指先で卒塔婆を片手に
私はいつ紫陽花を手折りましょうか