夜想葬曲

詩や短歌、想う事など

羽を拾う冬

愛する人の香りを纏った初春が、船に揺られてやってきた。
走る木枯らしの背に負われ夜の海に漕ぎ出た三日月に、人々は古く伝わる蛍雪を慈しむ。
鐘の音よ!鐘の音よ!居眠りする羊を昨日の夕日へ追い立てろ!
全ての人々の喜びの歌を標に初春はやってきた。
愛する人の甘い声に机上の雪は溶かされて、船が鳥居をくぐる頃には食べ頃だ。