2016-03-02 ある夜の事 詩 ある夜の事 お煎餅が割れました波の向こうのお煎餅 この間までまんまるで綺麗に輝いていたものですからわたしはひどく驚いて灯台に話を聞きますと 「鯨が齧つていったのさ」 と、灯りを回して笑います 鯨はそれをどうするのかと問いますと答えたのは彼でなく外国の船に乗りネズミ取りなぞをしている青い目の猫 「海の反対側へ持つていくのさ」 異国語訛りの言葉で教えてくれました 波の向こうの煎餅は 欠けても変わらず明かります海の底のその先で 欠片も地上を照らすでしょう