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夜想葬曲

詩や短歌、想う事など

【小説】芍薬の花嫁

その日は生憎の雨で、弔問客のひそやかな会話が葬儀場に押し込められていた。 学生時代から付き合いのある友人の、そのお嬢さんが亡くなったと連絡を受けたのが一昨日の事。 おとぎ話と空想と、窓辺の庭と使用人だけが友達だったお嬢さんは、病気がちの体故…

静脈の春

「静脈の春」 時に逸りし春の風が我が血潮となりて先を歩ます。眼前の断崖にて沈む夕日は ゆ-こっとん、ゆ-こっとん船を漕いで海へ逝く。来た道ゆく道猫に食わせてあの子この子と幸福の数を数えている。川の色、山の色、猫の目の色、時計の針も、眠る少女のブ…

【HiGH&LOW二次創作詩】日向紀久「伏せた盃」

今日のムダ知識:汨羅は達磨の女。 「伏せた盃」 通りゃんせ 通りゃんせお天道様の細道で黒猫一匹日向ぼこ 裸足で歩いた少年の、影に一つ寒椿空では鷲が笑っている京で龍を食らった神様の祭囃子に篝火に、酒を月で温めた此処より春高楼の夢の跡 通りゃんせ 通り…

【HiGH&LOW二次創作詩】村山良樹「王様のうた」

HiGH&LOWはいいぞ。 「王様のうた」 あれとこれと全てを投げ捨ててその手に釦ただ一つ。第二釦を握り締め世界に拳を振り上げる。 これが俺の心臓だ。これは俺の吐いた血だ。傷だらけの足で玉座に乗った。 それがお前の心臓だ。これが俺の焼いた骨。青い天を纏…

夕日香灯

夕日香灯(ゆうひこうとう) 死んだ初夏を桜の根元に埋めまして今日も月は店仕舞軒で嘆く子らを前に仏の足音が啜り泣いてやって来ます マッチ1本の火が私の涙その火で太陽を作るのです然もなくば役者が降ろした緞帳に谷の街は湖になるからです 雨雲を縫うあの…

ただ一度だけ(「会議は踊る」より)

とある話題の中で生まれた物語のイメージソングとして「会議は踊る」(1931年の映画)で歌われた「Das Gibt's Nur Einmal」が似合うのではないかと言うことで和訳していただいたものをもとに自分なりにメロディーに乗せられる詩を目指して作詞してみました。 既に…

羽を拾う冬

愛する人の香りを纏った初春が、船に揺られてやってきた。走る木枯らしの背に負われ夜の海に漕ぎ出た三日月に、人々は古く伝わる蛍雪を慈しむ。鐘の音よ!鐘の音よ!居眠りする羊を昨日の夕日へ追い立てろ!全ての人々の喜びの歌を標に初春はやってきた。愛…

鋼の雪

鋼の雪を踏みつけて 私は彼等の屍を登るひとりぼっちの雪原のバベルの塔のてっぺんへ 荒野の夕日に椅子の影とうに居なくなった薔薇の花私は貴女の声を探している 聞こえますか、今日の羊雲私は鋼の雪を食べてただ一つの歌をうたっているただ一つの声を待って…

【シン・ゴジラ二次創作短歌】龍の愛した女神への祝詞

http://bekira.hatenablog.com/entry/2016/09/27/230833の「恋人を喪った安田短歌」へ投稿した自作短歌 ・曙の紫に似た雲に発ち 君は神へと成ってしまった ・指先でなぞった髪の色に似た 黒い縁取りにある君の名は。 ・君眠り神を屠りし夜が明け 我が目や水を…

【シン・ゴジラ二次創作詩】東京駅に君の影を縫い付ける方法

待ちに待ったシン・ゴジラが公開され今のところ合計6回見に行った。 そんな中Twitterでフォロワーを中心に盛り上がった「立川での安田課長の顔、恋人喪った顔だよね…」というネタから生まれた二次創作自由詩2編。 まず暇な人はこの流れを把握してから読むのを…

ある夜の事

ある夜の事 お煎餅が割れました波の向こうのお煎餅 この間までまんまるで綺麗に輝いていたものですからわたしはひどく驚いて灯台に話を聞きますと 「鯨が齧つていったのさ」 と、灯りを回して笑います 鯨はそれをどうするのかと問いますと答えたのは彼でなく…

鯨の歌

鯨の歌 ここは海の底の底 クジラの声が聞こえます まっさかさまにおっこちて ぼくの影はどこへやら すこしの光は藻に砕け 硝子のように散りに散り ここは海の底の底 クジラがどこかで歌います まっさかさまにおっこちて ぼくの声はどこへやら すこしの息は泡…

今日もどこかで

今日もどこかで 静かにあめが降りました温かいのか冷たいのかあまいのかにがいのかわからず袋に詰めました 空があかく焼けました朝になるのか夜になるのかうれしいのかかなしいのか知らずに瓶に詰めました 風が吹いたのですがそれは袋にも瓶にも入らずにひと…

夜明け頃

夜明け頃 月が行灯を食べる頃裏戸で鯨が跳ねましたそうっと出てきたお日様は地平に朝を告げるのです さて、その頃山が恋をする欠伸を溢すセーラーに木々はその葉を赤く染め彼女に首(こうべ)を垂れました お日様立橋昇る頃鯨が月を食べましたそうして朝はやっ…

春の神話

春の神話 桜ひとつ眠った連理の枝に雪がそっと開いた月の憂いにも似た瞳は揺れる夜の帷の中 いつか誰かが呼んだ名前をひとつ雪にそっと溶かして朝日手招いてほら狛犬たちがやさしく笑ってる 散らざるはあなたの言の葉止めないで風が薄紅に色づくから 愛しい…