2016-02-24 鯨の歌 詩 鯨の歌 ここは海の底の底 クジラの声が聞こえます まっさかさまにおっこちて ぼくの影はどこへやら すこしの光は藻に砕け 硝子のように散りに散り ここは海の底の底 クジラがどこかで歌います まっさかさまにおっこちて ぼくの声はどこへやら すこしの息は泡に消え 空に向かう星になり ここは海の底の底 クジラが誰かに歌います 彼らが揃うて歌うのは 遠い太古の昔の昔 誰かの母が歌う唄 ヒトの忘れた子守唄 ぼくは海の底の底 クジラの歌に飲み込まれ 君は水際(みぎわ)に消えちゃった
2016-02-23 今日もどこかで 詩 今日もどこかで 静かにあめが降りました温かいのか冷たいのかあまいのかにがいのかわからず袋に詰めました 空があかく焼けました朝になるのか夜になるのかうれしいのかかなしいのか知らずに瓶に詰めました 風が吹いたのですがそれは袋にも瓶にも入らずにひとりでに笑っておりました 星が輝いておりましたあまりに清廉であまりに綺麗であまりに多様であまりに唯一で一つケエスに詰めました あとは花や水や音楽やそれらを誰かが匣に詰め誰かが今日も生まれます
2016-02-22 夜明け頃 詩 夜明け頃 月が行灯を食べる頃裏戸で鯨が跳ねましたそうっと出てきたお日様は地平に朝を告げるのです さて、その頃山が恋をする欠伸を溢すセーラーに木々はその葉を赤く染め彼女に首(こうべ)を垂れました お日様立橋昇る頃鯨が月を食べましたそうして朝はやってきます電車に乗ってやってきます
2016-02-21 春の神話 詩 春の神話 桜ひとつ眠った連理の枝に雪がそっと開いた月の憂いにも似た瞳は揺れる夜の帷の中 いつか誰かが呼んだ名前をひとつ雪にそっと溶かして朝日手招いてほら狛犬たちがやさしく笑ってる 散らざるはあなたの言の葉止めないで風が薄紅に色づくから 愛しい季節にこの手を触れて胸に抱いて桜をあげよう足跡が消えゆくこの春の日に風は光り里へと翔けゆく 背景画像 http://suisai.blog.jp/